全国学力調査テストにまつわる問題性 [教育問題]
あす4月24日、約40年ぶりに、全国学力調査テスト(以下、「全テ」と略す)が犬山市と若干の私立を除いて全国的に実施される。ここに京都市のある学校も現在、児童生徒から仮処分申請がなされているので、実施されない可能性もある。
4月以降の全国紙とスポーツ新聞のWEBに、全テに関する記事が時折紹介されていたので、そこから知れる第2次情報を表題によって整理すれば、「全国学力調査、答案用紙に氏名に代わり番号記入認める」(『朝日新聞』2007年4月2日付・註1)、「小6も番号方式…個人情報の保護で文科省」(『毎日新聞』同年4月10日付・註2)、「小6対象の全国学力調査、『無記名』希望の自治体続出」(『朝日新聞』同年4月11日付・註3)というように、テスト用紙に名前を書くかどうかが、最初の問題になっているのがわかる。
この学テがベネッセとNTTデータの民間委託業務(それぞれの会社が小と中を分担)として実施されるところに批判が向けられ、個人情報の漏洩を心配する正常な意見が、保護者や学校関係者から続々表明されたわけである。「本当に結果が漏れないのか、漏れたら企業責任になるのか、それとも実施者たる国になるのか、3セクのように責任の押し付け合いになるのではないか」とか、「民間企業を儲けさせる措置なのか」とかの声があがっている。
試験結果が漏れないことはない。必ずどこかで誰かが漏らす。「人の口に垣根は立てられぬ」、そういうものである。ただ、隠蔽されて、漏れないように「みかけ」を整えるだけである。教育の市場原理導入の精神からいえば、逆に、試験結果を公表した方が、学力重視の人気校がはっきりわかることになるので、学テ推進派は実は公表を望んでいるのだろう。
教育課程の点検、公表、評価、情報公開の考え方からすれば、そっちの方がすっきりする。個人情報保護法と整合性をとろうとするなら、学テを実施するのは無理である。実施したとして、何のためにすべての児童生徒に学テを実施するのか、全員参加でも、一部参加のサンプリング方式でも結果がかわらないというのだから全員参加の実施意味がない。テレビの視聴率調査と同じである。
さて、1行目にも書いたのであるのだけれど、京都市の「児童生徒」が裁判所に仮処分申請した。
| 小中学生が学力テスト差し止め求める - 社会ニュース : nikkansports.com
[2007年4月16日19時8分] 文部科学省が国公私立の小学6年と中学3年を対象に24日実施する全国学力テストは個人情報保護法などに違反するとして、京都府内の小中学生9人が16日、京都市と京田辺市の教育委員会にテストを実施しないよう求め京都地裁に仮処分を申し立てた。 原告弁護団によると、テスト差し止めの仮処分申請は初めてという。 弁護団は「組や出席番号といった個人を特定できる情報を、採点する受験企業に流すのは個人情報の目的外提供にあたる」などと主張。また、学力テストで学校の序列化が進み、等しく教育を受ける権利が侵害されるなどとしている。 申し立てたのは府内の中学3年4人と小学6年5人。文科省は学力テストで氏名や性別などの記入を原則としている。 京都市教委は「氏名の代わりに番号を記入するなど個人情報の保護には万全を期している」とし、京田辺市教委は「申し立ての内容を見ていないのでコメントできない」としている。 全国学力テストは自主参加形式で、愛知県犬山市教育委員会が競争力で学力向上は図れないなどとして不参加を決定している。 |
この仮処分申請の意義は、「大人(保護者・有権者あるいは義務教育受益者)」ではなく、たとえ保護者の意志が働いているとしても、「児童生徒」自らが申請したところにある。おそらく、仮処分は、却下されるであろうから、提訴は必至である。これはスゴイ行政裁判になる。というのは、「教育を受ける権利」を有する児童生徒自らが自己の学習権を賭けて闘うことになるからである。
教育を受ける権利(憲26条)とともに、思想・信条の自由(憲19条)に対して、新しい司法判断がくだされることになるだろう。大いに注目されるべきである。果たして、子どもたちの挙げた声は、どういうふうに解釈されるのであろうか。
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註1
「全国学力調査、答案用紙に氏名に代わり番号記入認める」(2007年04月02日20時23分朝日新聞)
全国の小学6年生と中学3年生約240万人の大半が参加し、24日に約40年ぶりに行われる全国学力調査で、実施主体の文部科学省は2日、答案用紙に名前を書く小6について、名前は書かずに番号を記入する方式も認めることを明らかにした。答案は民間の「ベネッセコーポレーション」(本社・岡山市)が回収・採点するため、関係者から「個人情報保護の点から問題」との指摘が相次いでいた。
中3の答案用紙には氏名欄がなく、あらかじめ書いてある個人番号で学校だけがどの生徒の答案かがわかる。ただ、番号と名前を照合するために一定の作業が必要で、小6では「児童の作業負担を減らす」との理由で答案に名前を書く。
文科省は「小6についても個人情報保護には万全を期している」としているが、全日本教職員組合や教育学者らが問題視。一部の教育委員会からも、名前を書かない方法での対応を求める声が出たため、文科省は「例外措置」として番号方式を認める。
文科省はその条件として、自治体の個人情報保護審議会から「氏名記入には問題がある」との指摘があることや、自治体独自の学力テストで番号方法をとっていることなどをあげている。
註2
「<学力テスト>小6も番号方式…個人情報の保護で文科省」(4月10日19時24分配信 毎日新聞)
今月24日、小6と中3の全児童・生徒を対象に行われる全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、文部科学省は10日、小6向けの解答用紙に名前の代わりに番号を記入する「番号方式」を例外的に認めることを明らかにした。同方式は個人情報保護などのため、一部自治体などから要望があった。
氏名記入欄がそもそもなく、個人番号で識別する中3とは異なり、小6の解答用紙は氏名記入欄があった。番号という「匿名」のテストに慣れていない小学生の戸惑いに配慮したという。
しかし昨年、本番と同様の予備調査を行ったところ、家庭の状況などを記入する項目に「家に何冊本があるか」「家の人と一緒に旅行に行く」などプライバシーにかかわる設問があった。さらに、調査の発送・回収、採点などを民間企業が行うことから「個人情報保護に問題が出る恐れがある」などと指摘された。
このため、文科省は今年3月に方針転換し、市町村の個人情報保護審議会から「氏名記入に支障がある」と指摘された場合などに限って、例外的に番号方式も認めることにした。
調査の発送作業などは、ベネッセコーポレーション(本社・岡山市)が小学校、NTTデータ(同・東京都江東区)が中学校を担当する。【高山純二】
註3
「小6対象の全国学力調査、『無記名』希望の自治体続出」(2007年04月11日08時50分朝日新聞)
全国の小学6年生と中学3年生約240万人の大半が参加し、24日に約40年ぶりに行われる全国学力調査で、回答用紙に名前を書く小6について、文部科学省が例外措置として認めた無記名の「番号方式」を希望する自治体が相次いでいる。10日には文科省が教育委員会への説明会を東京で開いた。多くの教委は今後対応を決める。
小6の回答用紙は、民間企業のベネッセコーポレーション(本社・岡山市)が回収・採点する。個人情報保護への不安が寄せられたため、文科省は3月末、自治体による学力テストで番号方式をとっていることなどを条件に、番号方式も認めることを決めた。
これを受けて大阪府では、府教委によると大阪市を除く全市町村が番号方式を希望している。残る大阪市教委は「未定」としている。
京都府では、全26市町村のうち18の自治体が番号方式を希望しているか検討中。京都市教委の担当者は「市の学力調査も番号で実施している。回答用紙が学校の外に出るので十分な注意が必要」と番号方式を望んでいる。神奈川県や千葉県でも複数の自治体が番号方式を希望。愛知県でも希望する自治体がある。
全国学力調査での個人情報保護については、請願を受けた兵庫県南あわじ市議会が3月末、個人名の記入には慎重に臨むことなどを求めた意見書を可決、市教育長に提出している。








なお、北海道新聞:社説4月22日付
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/21969.html
「安倍晋三首相は著書『美しい国へ』で、学力テストの調査結果を公表することで『保護者に学校選択の指標を提供できる』と強調している」。
by kou (2007-04-23 22:01)
「教育再生会議・第11 回 学校再生分科会(第1分科会)議事概要」(平成19年4月24日)より
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/1bunka/dai11/11gijigaiyou.pdf
田中氏(日本経済団体連合会常務理事)から提出資料の説明
・ 学校評価については、評価項目に一定の基準を取り入れるなどして学校間で比較できるようにすることが必要。また保護者が評価に参加することも必要。全国学力調査の結果についても学校ごとに公表することがいいと思う。
by kou (2007-05-02 22:58)